著者: Priyanka Sharma, Senior Vice President, Software Engineering, Suvoda LLC
ブログの概要:
- 継続的なリスク管理:効果的なリスク管理には、テクノロジーや規制の進化に伴う定期的な評価と適応が含まれます。
- 予防的なリスク管理:臨床試験には、各組織の独自の許容レベルに合わせたリスク分析が必要です。
- プライバシーのバランス:組織は、患者データを保護する一方で、臨床試験全体を通してリスクとメリットについて患者さんに透明性を持って説明しながら研究を進めなければいけません。
臨床試験規制遵守の維持とリスクの最小化を図りながら、イノベーションを推進し続けることが求められています。正式な規制、非公式のガイダンス、そして業界のベストプラクティスが進化し続ける中、このような状況を乗り切るために、組織はどのような点に留意すればよいのでしょうか?
完全性を備えたイノベーションの重要性
新たなテクノロジーは、患者さんの体験を向上させ、医療機関や治験依頼者の業務効率を高め、データ品質を改善することができます。しかし、それらの成功は、安全性、リスク、コンプライアンスと進歩とのバランスを取りながら、思慮深く行うことにかかっています。臨床試験には、患者さんのプライバシーや安全(例:患者さんが適時に正しい治験薬を正しい用量で投与されるようにする)、臨床試験の完全性(例:正しいランダマイゼーションや盲検性の維持)、規制遵守 (例:明確な監査証跡やユーザーアクセスの制限)、安全なシステム操作(例:治験実施計画書を実行するための機能)など、管理しなければならない固有の複雑なリスクが存在します。
臨床試験業界は、企業がこれらのリスク因子に細心の注意を払いながら革新的な技術を導入することで、利益を得ることができます。設計の初期段階から強固なセキュリティを備えているソリューションは、進捗を妨げることなくコンプライアンスを維持するのに役立ちます。規制を障壁ではなく安全な道筋を示すものとして捉えれば、規制は安全で効果的なイノベーションを導くものとなり、それらのイノベーションによって医学研究を支援し、願わくは人々の生活を向上させることができます。
進化する規制環境を理解する
臨床試験業界は強固な規制環境の中で運営されていますが、その規制環境には、明確に定められた規則と、解釈の余地がある領域の両方が含まれています。「Applying Technology Advancements to Overcome Challenges in Clinical Trials」という先日のウェビナーでは、この業界のベンダーには、基本的に、規制遵守とプライバシーに関する要件を明確に理解することが求められているということを説明しました。
難しいのは、まだ正式な規制事項とはなっていないガイダンスをチームがどの程度重視すべきか決めなければならないときです。その答えは、多くの場合、組織の規模、リスク許容度、戦略目標によって異なります。臨床試験におけるリスクの正しい評価と管理の方法は一つではありません。最も重要なのは、組織が、常に患者さんの安全を第一に考えて、状況に応じた徹底的なリスク分析を行うことです。
安全とイノベーションの両立
臨床試験が新しいテクノロジーを取り入れるのと同時に、保護の枠組みも進化しなければなりません。そのような枠組みが思慮深く設計されていれば、臨床試験の完全性を損なうことなく、イノベーションを増進することができます。
私はウェビナーで次のように述べました。「私たちの業界には特に、リスク回避的にテクノロジーを採用するのに不可欠な要素がかなりたくさんあります。」
それらには以下のものが含まれます。
- リスク分析:まず、新たなテクノロジーがどのように患者さんの安全やデータインテグリティにどのような影響を及ぼし得るかを評価し、次にそれらのリスクに対処するための事前の対策計画を立てます。
- 運用管理:基本が重要です。明確な標準業務手順書(SOP)や定期的なスタッフトレーニングは、チームが新しいツールを使用する際に適切な手順に従うのに役立ちます。
- インシデント対応計画:明確に定められたプロセスは、予期せぬ問題が発生した場合に治験チームが効果的に対応するのに役立ちます。
- 技術的な保護措置:監査証跡、暗号化、GDPR(欧州連合の一般データ保護規則)遵守などの機能を備えた安全なシステムは、信頼できるデジタル臨床試験の土台となります。
透明性のあるデータ使用により患者さんに権限を与える
安全性に加えて、臨床試験における患者データの保護も、リスク管理の重要な構成要素の 1 つです。臨床試験の中心的存在である患者さんは、臨床試験のごく最初の時点で、自分のデータを研究者と共有することに同意しなければなりません。患者情報は保護されなければなりませんが、多くの患者さんは、その目的と価値を理解すれば個人データを共有することを受け入れます。透明性が信頼を築くのです。患者さんは、自分のデータがどのように使用され、どのような保護措置が取られているのか知っていれば、より多くの情報に基づいて、確信を持って、臨床試験に参加するかどうかを決めることができます。この保護と進歩のバランスが、イノベーションに対するアプローチそのものに必要であるより広範なバランスを反映するのです。
イノベーションは定期的な運動を必要とする筋肉のようなもの
私は、イノベーションを、一連の目覚ましいブレークスルーと捉えるのではなく、常にリスク管理とコンプライアンスを取り入れながら、着実かつ意図的に磨きをかけていくものだと考えています。私はウェビナーで次のように述べました。「私が考えるイノベーションとは、継続的な改良です。イノベーションは、確実に結果を出すために鍛え続ける筋肉のようなものです。」
このように考えれば、組織は、革命的な変化が起こるのを待つのではなく、臨床現場のユーザーからのフィードバックや、進化していく規制ガイダンス、そして最新のリスク管理に基づいて、少しずつ意味のある改善を重ねていくことに集中することができます。最も効果的なイノベーションは、多くの場合、突発的なひらめきから生まれるのではなく、実際には何が効果的であるのか(そして何が効果的でないのか)を注意深く観察することから生まれるのです。
リスクと規制とイノベーションのバランスを慎重に取る:継続的な優先事項
リスク管理は一度だけ行えば済むものではなく、継続的なプロセスです。私はウェビナーで次のように述べました。「これは特効薬ではありません。この業界で起きている技術革新や、私たちが直面する状況の変化とともに、進化し続ける必要があります。」
実際、この業界は、アダプティブ臨床試験デザインおよび継続的な運営管理へとシフト変換しています。臨床試験がより柔軟性を持つようになったように、リスクに対するアプローチも、新しいツール、患者さんのニーズ、規制の改訂に合わせて進化しなければなりません。
臨床試験におけるイノベーションとは、単に新しいツールを導入することではなく、患者さんの安全と規制の完全性を念頭に置きながら思慮深く新しいツールを導入することなのです。企業は、意図的で透明性の高いアプローチを取ることで、患者さん、医療機関、規制当局の信頼を得ながら、意味のある進歩を推進することができるのです。
Author

Priyanka Sharma
Senior Vice President, Software Engineering,
Suvoda